結婚していない男女と生まれた子の間に親子関係を成立させる方法も、国によって異なります。日本では、父または母による子に対する認知により法律上の親子関係が成立しますが、出生という生理的事実によって親子関係が自然に成立するという国もあります。

 戸籍上、結婚している夫婦間に生まれた子どもを「嫡出子」、結婚していない男女間に生まれた子どもを「非嫡出子」といいますが、結婚していない男女間に生まれた子ども(非嫡出子)との親子関係の成立について、日本の国際私法の判断は次のようになっています。

 ① 父との関係については出生当時の父の本国法によること
 ② 母との関係については出生当時の母の本国法によること
 ③ 父母の本国法のほかに、認知の当時における認知する者または子の本国法によることもできる

 そして父母または認知する者の本国法に「その子や第三者の承諾または同意があることが認知の要件とする」旨の規定があれば、その要件も満たす必要があります。成長したときに親の面倒を見てもらうことを意図して認知を行う場合を考慮して、子の保護を図っているというわけです

 認知とは、結婚していない男女の間に生まれた子について、法律上の親子関係を認める意思表示をいいます。日本の法律では、おおよそ次のような認知の手続きが認められています。

① 任意認知:父が自発的に自分が生ませた子であると認める認知です。「胎児認知」や「生後認知」などがあります。
       ● 胎児認知:父が母の胎内にある子を自分の子であると認める場合です。母の承諾が必要であり、母の本籍地(外国人の場合は、住所地)に届出します。
       ● 生後認知:子が成年である場合は、子の承諾が必要です。
② 強制認知:父が認知に応じない場合には、子の出生後、子側より裁判所に認知の訴えを提起します。ただし胎児認知は父に対し強制できません。認知の裁判が確定した場合には、提訴した者が確定日より10日以内に裁判の謄本を添えて届出します。

③ 遺言による認知:認知は遺言によってもすることができます。そしてう遺言執行者はその就任の日より10日以内に認知に関する遺言の謄本を添えて届出を行います。

「事実主義」と「認知主義」

 日本では、父または母の認知によって、結婚していない男女の間に生まれた子との親子関係を成立させる「認知主義」が採用されています。これに対し、出生という自然的事実によって当然に親子関係が成立するとする考え方を「事実主義」といいます。もっとも日本では、母と子の関係は出生の事実が立証されれば、認知しなくとも母子関係を認める扱いですので、部分的に「事実主義」を取り入れているといえるでしょう。したがって認知が問われるケースは父子関係についてであり、結婚していない男女の間に生まれた子は、父との間に血縁上の親子関係があるとしても、父が認知の届出をしなければ法律上の父子関係が認められないことになります。現在多くの国で「認知主義」が採用されていますが、中国、フィリピン、カナダ(一部の州)などの国では、出生という自然的事実によって親子関係を認める「事実主義」を採用しています。

実質的要件

日本の国際私法によれば、次のいずれかの国の法律によって認知の要件を満たしていれば、認知によって親子関係を成立させることができます。

① 子の出生の当時における父または母の本国法
② 認知の当時における認知する者の本国法
③ 子の本国法

なお、父母の本国法および認知する者の本国法によって認知する場合(①、②の場合)は、子の本国法上の保護要件(子や第三者の承諾・同意など)も備えなければなりません。

もし父親が日本人、母親が外国人のカップルであれば、日本法を準拠法として考えればよいでしょう。そして子の国籍が外国法により決まる場合、その国の法律の保護要件も満たす必要があります。

民法の「認知」に関する規定 「嫡出でない子は、その父または母がこれを認知することができる」(民法779条)
民法による保護要件
① 成年者を認知する場合の成年者の承諾
② 胎児認知の場合の母親の承諾
③ 死亡した子を認知する場合の子の直系卑属(子や孫)の承諾

よって生まれた未成年者を認知する場合は、特に保護要件はありません。

形式的要件

認知の方式について、日本の国際私法は、

① 認知行為の成立について適用された国の法律
② 認知行為を行った国の法律
のいずれかの法律で認められる方式でよいとしています。

日本において日本人である父が任意に子を認知する場合は、日本法が適用されますので、日本の方式により市区町村長への届出をすることになります。ここで子の本国法の保護要件を満たす必要がある場合、子の保護要件を規定した法令の翻訳や子の保護要件を満たしていることを証明した書類も提出しなければなりません。

また、日本において外国人である父が日本人母の産んだ子を認知する場合、認知行為が父の本国法によって成立した場合であっても、認知行為を行う国の方式によることも可能ですので、日本人母は、日本の方式により市区町村長への届出をすることになります。

「子どもと国籍」のところで述べましたように、認知は子供が外国人母の胎内にいるときに日本人父が認める「胎児認知」ならば出生後に日本国籍を取得できます。では、日本人父が胎児認知しない場合はどうなるのでしょうか?このように出生により日本国籍を取得できない日本人父の非嫡出子は、出生後次の二つの方法により日本国籍を取得することができます。

■ 準正(じゅんせい)による国籍取得 ■

準正とは、生まれた非嫡出子が、出生後に父母が婚姻(いわゆる「できちゃった婚」)することにより嫡出子の身分を取得することをいいます。

■ 準正の要件

① 父母が婚姻すること
② 父親が子どもを認知することにより法律上の親子関係が生じること

ところで準正には次の二つがあります。

婚姻準正:父親が子どもを認知した後に父母が婚姻すること
認知準正:父母が婚姻したあとに父親が子どもを認知すること

日本の国際私法によれば、婚姻準正は婚姻したとき、認知準正は認知したときの父、母、子のいずれかの本国法によって準正の要件①②が満たされれば、子は嫡出子となることができます。つまり父親が日本人であれば、日本法の準正の要件を満たす限り、生まれた非嫡出子は嫡出子になれる場合があるわけです。

■ 準正により嫡出子となった子どもの日本国籍の取得

準正により嫡出子の身分を取得した子どもは、未成年の間に限り住所地の法務局に届出することにより日本国籍を取得できます。準正が未成年の間に成立しても、20歳の成年に達した後は、この届出はできなくなりますのでご注意ください。また、この国籍取得の届出から1ヶ月以内に、その事実を戸籍に記載するため地元市町村への届出も必要です。
 
■ 簡易帰化による国籍取得 ■

また、非嫡出子が出生後に父親により認知されたが、父母の正式な婚姻による準正が成立しなかった場合はどうでしょうか。 たとえそのような子供であっても、日本に住所を有する場合には、居住要件、能力要件、生活安定要件が満たされなくても帰化の申請を行うことにより日本の国籍を取得できる場合があります(簡易帰化)。

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