外国人と日本人のあいだに子どもが生まれたからといって、自動的に日本国籍が与えられるとは限りません。生まれた子どもの国籍の決め方は、国によって違います。ここでは子どもが生まれたときに日本国籍を取得する場合を説明いたします。

 日本の国籍法によれば、出生のときに父または母が日本国籍であれば、その子どもは日本国籍を取得すると定められています。また両親が不明の場合や無国籍の子供も、法律上、日本国籍が与えられます。

 ■ 日本人母と外国人父の場合 ■

 一般的に正式に結婚しているかどうかにかかわらず、母親と子供の血縁関係は明白であるため、子供は母親の日本国籍を取得することになっています。

 ■ 日本人父と外国人母の場合 ■

 この場合の「父」とは正式に結婚した「法律上の父」である必要があります。もし結婚が成立していなければ、子どもは婚外子(非嫡出子)であり、父親との親子関係は認められませんので、父親の日本国籍を与えたいならば、父親が自分から「私の子供である」と法的に認める「認知」という行為が必要になってきます。認知は子供が母親の胎内にいるときに父親が認める「胎児認知」ならば出生後に日本国籍を取得できます。また出生後の認知であっても子が20歳未満であれば、法務大臣に届け出ることにより、日本国籍を取得できるようになりました。

国籍取得の考え方について「生地主義」と「血統主義」に大きく分けることができます。

■ 生地主義 ■

 両親の国籍に関係なく、生まれた国の国籍を取得できるとする考え方です。例えば日本に住む中国人夫婦が生地主義を採用しているアメリカで子どもを生む場合、その子どもにはアメリカ国籍が与えられます。同様に日本人夫婦がアメリカで子どもを生む場合もその子どもにはアメリカ国籍が与えられます。しかし日本の国籍法からすれば、両親が日本人ですので日本国籍も与えられて、その子どもは二重国籍となり、後に国籍の選択が必要になります。

生地主義の採用国:アメリカ、カナダ、ブラジルなど

■ 血統主義 ■

 生地主義とは違い、生まれた国に関係なく、父母から受け継いだ血縁関係により国籍を取得するという考え方です。日本はこの血統主義を採用している国であり、父母のどちらかが日本人であれば、生まれてくる子どもは日本国籍を取得します。この血統主義は大きく「父系優先血統主義」と「父母両系血統主義」の2つに分けることができます。

① 父系優先血統主義

 父親の血統を優先するもので、父親の国籍のみをその子どもが受け継ぎます。以前は日本や韓国も父系優先血統主義でしたが、現在は両国とも父母両系血統主義を採用しています。

 父系優先血統主義の採用国:インドネシア、スリランカ、イラク、イランなど

② 父母両系血統主義

 父または母のいずれかがその国の国籍であれば、子どももその国籍を取得するという考えです。日本はこの主義を国籍法に採用しています。

 父母優先血統主義の採用国:日本、韓国、中国、タイ、フィリピン、インド、ドイツ、フランスなど

 日本人夫婦のあいだで生まれた子どもであっても、アメリカなど生地主義を採用する国で生まれた場合は二重国籍になる場合があります。また日本で外国人と日本人のあいだで生まれた子どもも日本国籍を取得すると同時に外国人配偶者の国籍を取得し、二重国籍になることもあります。本来は「人はいずれかの国の国籍を一つのみ有するべき」ことが国籍法の基本姿勢(「国籍唯一の原則」)です。日本の国籍法によれば、二重国籍となった子どもは生まれた日から3ヶ月以内に、在外公館または本籍地の市区町村役場に「出生届」とともに「国籍留保」の届を提出する必要があります。この届出を怠りますと出生時にさかのぼり子どもの日本国籍は失われることになります。この届により子どもが二重国籍になった場合は、22歳までにいずれかの国籍を選択しなければなりません。国籍の選択を子どもが成人になってから自らの判断で行えるように配慮したものです。22歳までに日本の国籍を選択しないものに対し法務大臣は書面により催告することができ、催告を受けた日より1ヶ月以内に日本の国籍を選択しなければ日本の国籍を失うこととされています。

 ■ 20歳に達した後の国籍選択 

 二重国籍者の国籍選択の問題は出生だけでなく、結婚により二重国籍となった場合にも発生します。20歳に達したあと二重国籍となった場合はその時から2年以内にいずれの国籍にするか選択しなければなりません。

 ■ 国籍の再取得届 

 国籍留保の届出をせずに日本国籍を失った場合でも、20歳未満かつ日本に住所地がある場合は、住所地を管轄する法務局に届けることにより日本国籍を再取得することができます。帰化と同じように自らの意思による日本国籍の取得とみなされますので、出生時に取得した外国国籍が自動的に喪失することがありますのでご注意ください。

 ■ 国籍の喪失届 

 出生により二重国籍になった子どもなどが、外国籍の選択、国籍の不選択、日本国籍の離脱などにより日本国籍を喪失する場合は、その者を戸籍より除くために法務局に対し国籍の喪失届を提出します。届出義務者は本人およびその配偶者、四親等内の親族であり、国籍喪失の事実を知った日より1ヶ月以内に提出します。ただし届出義務者がその事実を知った日に国外にいる場合はその日から3ヶ月以内に届出します。日本国籍を失った日から60日以上日本に在留する予定の方は、喪失日より30日以内にお近くの入国管理局で在留資格取得の申請を行ってください。

 では、アメリカなど生地主義国で生まれた重国籍の子が日本に帰国するとき、どちらの国の旅券を使用すればよいのでしょうか?
 国際法の基本的な考えとして、日本国籍を有している二(多)重国籍者は、日本政府より日本人として処遇されますので、日本に帰国するに当たり日本の国籍を証する書類、旅券や戸籍謄本の提示が必要です(出入国管理及び難民認定法第61条)。外国に住む重国籍者は通常現地の日本大使館等で旅券を申請、取得してから日本に帰国することができます。旅券や戸籍謄本等の日本国籍を証する文書を所持していない場合は、外国人として上陸手続きを受けなければなりません。ですから通常の外国人と同じように在留資格や在留期間が与えられることになります。このように外国人として入国したといっても、日本国籍を有する日本人ですので、入国してから入国管理局に戸籍謄本等を提出して在留資格の抹消手続きを行うことができます。
 一方、重国籍者としての日本人が日本を出国する場合は、必ず日本のパスポートを所持し入国審査官より出国の確認を受けなければいけません(出入国管理及び難民認定法第60条1項)。

〔出入国管理及び難民認定法〕

第60条 本邦外の地域に赴く意図をもつて出国する日本人(乗員を除く。)は、有効な旅券を所持し、その者が出国する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から出国の確認を受けなければならない。
2 前項の日本人は、出国の確認を受けなければ出国してはならない。

第61条 本邦外の地域から本邦に帰国する日本人(乗員を除く。)は、有効な旅券(有効な旅券を所持することができないときは、日本の国籍を有することを証する文書)を所持し、その者が上陸する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から帰国の確認を受けなければならない。

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